2016-06-30から1日間の記事一覧

夢の国へご招待

「おめでとうございまぁぁす!」 そのドアが開くと、僕たちはそれぞれに考えたポーズを決め、精一杯の笑顔で叫んだ。 「小島千絵さんですね? 先日、応募されました、『赤ハム主催・食べて当てよう・夢の国ご招待キャンペーン!』ですが、厳正な抽選の結果、…

3分間クッキング

「先生、次こそは3分間で終わらせて下さいね?」 たびたび「3分間」を越えて時間を使ってしまう料理研究家に、番組プロデューサーが皮肉を言った。 「生放送なんですから。困りますよ。先生の時間オーバーが、あとあとに響いてきちゃうわけですから」 時間…

ごんぎつね

「ママ、あれ絶対ごんぎつねだったよね!」 「そうだよね、あれはごんだよ!」 「明日、栗があったら、きっとごんだね!」 「うん、ごんが柿とかもくれるかもね!」 夜になって寝る時間になっても、幼い姉妹の興奮は冷めなかった。 滅多に来ない山のおばあち…

衝撃的な映像

(砂嵐のあと、スクリーンに映像が映し出される。ごく普通の一軒家。ややあって、コンコン、とノックの音。続けて、ガチャ、とドアの開く音。その隙間から) 「うちはセールスお断りだよ! そう書いてあるだろ!」 (怒鳴る声。ガチャ、再びドアが閉まる、コ…

悪そうな奴らはだいたい友達

違うって。 だから、そうじゃないって。 最初から、悪そうな・・・やつらって言ってるだろ? ああ、そうだよ。お前、日本語わかんねえのか? 悪そうな・・・っていたら、悪そうなってことだよ。 そうだよ、悪そうな・・・んだから、悪くはねえよ。 けど――こ…

隣の国

「私たちの国は隣同士だというのに、どうしてこんなに仲が悪いのでしょう」 あるとき、平和を愛する人が叫んだ。 「お隣なんだから、仲良くするべきです。そうでしょう? 近くの国同士が仲良くすれば、お互いたくさんの利益があるではないですか!」 「まっ…

女子高生のピタゴラス

「昨日お風呂に入ろうと思ったらさあ、お湯入れ過ぎちゃってー。溢れる寸前のとこで止めたんだけど」 「あー、あるある。お湯が溢れてもったないよねえ」 「いや、あたし、もう入る気が失せて、結局入らなかったんだー」 「ええー、なんで、入ればいいじゃん…

ギネスに挑戦

「流しそうめんか……」 「ああ、流しそうめん」 「流しそうめんにするか」 「ま、妥当なとこだろう」 「何メートルにするかが問題だな」 「ああ、問題だ」 「いまの記録は?」 「3328.38メートル……3.3キロってとこか」 「長いな」 「思ったよりも長…

ツチノコを探して

世界中でさまざまな動植物の新種を発見し、神と呼ばれる日本人がいた。 「これまでに千を越える新種を発見し、その新種のすべてにご自身で名前をつけたということで……いやあ、すごいです。その新種を見つけたときのお気持ちってどんな? やった、とか、また…

はじめて月に行った猫

その瞬間を、世界が待ちわびていた。 初めて月に行った猫・ルナが、猫としては初めて月面歩行に挑戦するのだ。 「じゃ、猫のあの可愛い肉球が月面に刻まれるってことですね!」 興奮気味のレポーターに、NASAのブラウン氏は「ノー」と答えた。 「君、宇…

宇宙からの侵略者

それは突然のことだった。 空が光ったと思うと、無数の宇宙船が現れ、そこから次々に宇宙人が地球に降り立った。 悪魔のような姿をした宇宙人に対抗するため、それぞれの国がそれぞれのやり方で対処した。 アメリカはミサイルを撃ち込み、アラブの国々は石油…

遅刻の言い訳

遅刻した三人の生徒が、教師に怒られていた。 「お前らなんで遅刻したんだ! 理由を言ってみろ! 藤川!」 「ぼ、僕は寝坊して……」 「目覚まし時計をかけとけ! 木村、お前は?」 「僕も……あの、いつもは母が起こしてくれるんですけど……」 「高校生にもなっ…

教祖の言葉

「こうしている間にも、宇宙は膨張し続けています」 テレビカメラに向かい、彼は厳かにそう言った。 「私たちのすべては太陽エネルギーから生み出され、それは元をたどれば、すべてはビッグバンの生みだした宇宙エネルギーであります。そして、この地球もそ…

おら東京さ行くだ

「駐車場を掃除しといて」 そう言われ、新人バイトの私は元気よく返事をした。 東北の山奥から東京に出てきて、一ヶ月。焼き肉屋でバイトを始めた私に命じられた、これが記念すべき初仕事だ。 「よし、頑張るぞ」 渡されたほうきとちりとりを手に、私はせっ…

おとななこども その1

「何やってんだあああああああああ!」 稽古場に怒声が響き渡った。 怒鳴っているのは、アバンギャルドな格好をしたダンス講師。怒られているのは、アイドルを目ざす、可愛らしい少女である。 講師は彼女を親の敵であるかのように睨みつけた。 「いいか、ち…

SF小説

「藤子不二雄は『SF』を『すSこしふFしぎな話』だって言ったそうだけど……」 僕の初めての小説を読んだ友人は言った。 「君の小説は何て言うか『すSごくふFしぎな話』だよね……」 しばらくの沈黙のあと、 「それって、褒め言葉として受け取って良いのか…

とりあえずビール!

あー、今日もやっと仕事が終わった! え? ずいぶんと充実したお仕事のようですねって? その表情でわかる? この不況で残業代も出ない、ブラックな時代に、さぞかしホワイトな大企業にでもお勤めなんでしょうね、だって? ははは、兄ちゃんは冗談がうまいね…

父と娘 その3

「…………………」 お風呂上がりの私が、テレビを楽しんでいる間、父はじっと黙り込んだままだった。 ……と思ったが、よく耳を澄ますと、何事かをブツブツとつぶやいている。 「メキョ? ムキュ……ペケルバット、メキョブキュ……ムキュペケルバット、メキョムキュメケ…

父と娘 その2

「スベスベマンジュウガニ、というカニがどうしてこんな名前になったか、という理由だがな」 お風呂上がりの私が、再びテレビを楽しんでいると、いままで番組に何の反応もしなかったお父さんが口を開いた。 「まず、マンジュウガニ属というカニの仲間がいる…

父と娘 その1

「トゲナシトゲアリトゲトゲ、という昆虫がどうしてこんな名前になったか、という理由だがな」 お風呂上がりの私がテレビを楽しんでいると、いままで番組に何の反応もしなかったお父さんが口を開いた。 「まず、『トゲトゲ』と名づけられた昆虫の一種である…

サナギの唄

あまり知られていないことかもしれないが、サナギは己が何者であるのかを知らない。 彼らに幼虫だった頃の記憶はない。また、最終的に蝶になるのか蛾になるのか、そんなことすら彼らは知らない。 いま、変態中のサナギの中身はグチャグチャドロドロの汁。そ…

君を永遠から殺す方法

カツン、カツン……鉄が剥き出しの階段に、足音が響く。錆びた手すりには水滴が滴り、この廃墟が朽ちる時間を早めている。 東京、新宿。 やつら・・・が地球を侵略し、人類が滅亡寸前に追い込まれてから、既に十年の月日が経つ。生き残った俺たちのような少数…

タイムスリップ

自称、江戸時代からタイムスリップしてきたという男は、道路を走る車を見て、 「鉄のイノシシじゃあ!」 と叫び、線路の電車を見て、 「人間が鉄のヘビに食われとる!」 と、頭を抱え、空を飛ぶ飛行機を見て、 「でっかい鉄の鳥が空を飛んどる!」 と、腰を…

踊る阿呆に観る阿呆

「いま、こんなことを言うのも何だけどさ」 隣に座った友人が低くつぶやいた。そのどこか神妙な顔が、スクリーンの賑やかな光で照らされている。 何だい、やはり低い声で僕がささやき返すと、彼は、 「こういうのを観てると、頭に『踊る阿呆に観る阿呆』って…

桃太郎

ここは、昔話の中の世界。 最近、しょぼくれた様子の桃太郎を気にして、お供の犬がそっと話しかけた。 「桃太郎さん、桃太郎さん、どうしてそんなに悲しそうな顔をしてるんだい?」 「ああ、昔はよかったなと思ってさ」 桃太郎は答える。 「昔?」 今度はサ…

ウルトラ・スペシャル・ラッキーマン

あのラッキーマンをもしのぐ、ウルトラ・スペシャル・ラッキーマンという男がいた。 彼は第二次世界大戦中、ドイツ在住のユダヤ人一家に産まれ落ちる予定が、天界でうっかり寝過ごしたため、産まれなかったのである。 【1分で読める超短編小説集】(山野ね…

山田博士の誕生日

「お母さん! 今日、ロボタはどうしたの! 起こしてくれないから、学校に遅れちゃうじゃない!」 少女が部屋から飛び出すと、キッチンでは黒煙が上がっていた。そこでは少女の母親が、 「ロボタは今日いないって、昨日言ったじゃない! ロビンがいないとそん…

老婦人の皿

それは独居老人用のサービス付きマンションに移るため、片付けをしている最中のことだった。私は戸棚の奥から、一枚の皿を見つけた。 それはいまから四十年も前に、旅行先で買った一点ものの有田焼だった。白い肌に描かれた二羽の青い鳥が美しく、一目惚れし…

腹話術師

あるところに、一人の男がいた。 彼は腹話術師だった。しかも、完全に口を閉じたまま、会話をするという世にも稀な技術を持っていた。 そんな彼に、ある記者が聞いた。 「あなたの芸は本当に素晴らしい。始めたきっかけは? どうしてプライベートでも腹話術…

アイ・キャン・スピーク・イングリッシュ

「アイ・キャン・スピーク・イングリッシュ!」 初めて訪れた日本。 その通りすがりの親切な青年に満面の笑顔で言われ、アレハンドロは笑い返した。 なぜなら彼は「アイ・キャント・スピーク・イングリッシュ」。 島国の民にはわからないかもしれないが、外…