2016-07-11から1日間の記事一覧

愛妻弁当

「や、高木くん、昼は弁当かね」 「結婚したばかりだから、愛妻弁当というやつだろう。うらやましいな、こいつ」 「どれどれ、中を見せてみろ……何だ、彩りがあんまりないな」 「もっと奥さんに料理を頑張ってもらわないと」 「これじゃ、オレの作る弁当と変…

殺しちゃダメだよ

「あ、ツトム! お前、やっと連れてきたのかよ。遅かったな」 秘密基地に帰ったノボルは、呆れたような声を上げた。 「でもまあ、このためにいままで練習してきたんだもんな。いよいよ本番ってわけか」 そう言いながら、無邪気な笑みを浮かべ、ツトムの肩を…

社会主義の弱点

「人間がみんな自立していて、かつ互いを尊重できるような生き物だったら、社会主義は素晴らしいシステムだ。みんなが自分を含めたみんなのために働き、その成果を平等に分配するわけだからね」 友人は言った。 「でも社会主義は実際うまくいかなかったわけ…

初夏の味

「庭にブルーベリーがたくさんできたので、ジャムにしようと思いまぁす! それでは、まずよく熟したブルーベリーをボウルにたくさん集めまして……」 真子ちゃんは嬉しそうに紫色の実を摘むと、その一つを口の中に放り込んだ。 「んん~! 甘酸っぱくて最高の…

show must go on―final

――北海道の一部と千葉を含む世界は滅び、ゾンビの汁まみれになったものの、四次元大魔王との戦いに勝利した私たちの芝居の幕は上がり続けている。 舞台上では最後の台詞がつぶやかれたところだった。 ゾンビの残骸が飛び散り、幕のなくなった舞台袖で、私は…

show must go on―part5

――北海道の一部と千葉は滅び、ゾンビの汁まみれになった私は、四次元大魔王との対峙をしているが、芝居の幕は上がり続けている。 舞台はそろそろ終わりに近づいたころだった。 ゴオオオオ、私は劇場を飲み込もうとする四次元大魔王に抗いながら、舞台上の役…

show must go on―part4

――北海道の一部と千葉は滅び、私は舞台裏に侵入したゾンビとの戦いを続けてはいるが、芝居の幕は上がり続けている。 舞台はクライマックスを迎えていた。 私は襲いかかってくるゾンビを、かなづちとバールで倒しながら、客席の感動を感じとっていた。 幾つも…

show must go on―part3

――北海道の一部と千葉は滅び、ゾンビ化した人間たちがこの劇場に押し寄せてはいるが、芝居の幕は上がり続けている。 舞台はそろそろ後半に差しかかったころだった。 私は、ドアから侵入しようとするゾンビたちを必死で押し返しながら、舞台裏まで響く役者た…

show must go on―part2

――北海道の一部と千葉は滅びたが、芝居の幕は上がり続けている。 舞台は早くも中盤に差しかかったころだった。 私は、いつも通り最高の演技をする役者たちを、舞台袖から見つめていた。 丸三ヶ月もの稽古の結晶。それが今この瞬間、目の前にある。 この芝居…

show must go on

――今日も芝居の幕が上がる。 舞台が明転し、役者が最初の台詞を口にする。 いつもの通りに始まった舞台を、私は袖から見つめていた。 劇団「櫂船かいぶね」、私はその舞台監督。 たとえ親が死んだとしても、役者は舞台に出なければならない――それと同じに、…

紫蘇

(あ、紫蘇しそ……) その夏の香りとみずみずしい青に惹かれ、私はふと足を止めた。 「お昼は簡単におそうめんにしようね」、夏休み中の娘とそう言い合い、やってきたスーパー。冷房の効いた店内に並んだそれは、思わず手を伸ばしてしまいそうなほど美しかっ…

元気が一番

「今日、涼太の先生と面談があってね」 家に帰ると、陰鬱な顔の妻がいた。夫はネクタイを外しながら、 「涼太、学校でどんな感じだって?」 そう言うと、妻は両手で顔を覆い、 「先生が……元気が一番ですね、って」 「元気が一番? まあ、そりゃそうだな。涼…

結ばれない関係

「あたしと彼、お互いに愛し合ってはいるけど、絶対に結ばれない関係なの……」 彼女は遠い目をしてそう言った。 時々「幽霊が見えるの」という、いわゆる不思議ちゃんな彼女だったが、それでも僕は好きだった。 だから「好きだけど結ばれない彼がいる」、そう…

バトルロワイヤル

「あ、これ知ってる。有名な映画だよね? クラスで殺し合いする、みたいなやつでしょ? でも、『バトルロワイヤル』ってどういう意味?」 私が聞くと、彼は、 「あー、それプロレスで自分以外は敵、みたいな試合形式のことだけど、映画のタイトルにするなら…

はたらくくるま

ある朝、幼稚園にて。絵海ちゃんパパの質問に子供たちは、 「うちのパパ、ダンプの運転手さんだから、運転席に乗せてもらったことあるよ!」 「あ、オレもある!」 「オレなんか、トラクターに乗ったことあるぞ!」 「うちのおじいちゃん、ショベルカー動か…

1995年を知らない子供たち

「ほら、あの星よ」 宇宙船の外に見えた惑星を指し、教師が言った。 「あれがペガスス座51番星の惑星。西暦1995年に初めて発見された太陽系外惑星よ」 「あれが51番星の……」 「938番星の光に似てるね」 「当たり前だろ、938番星は51番星と同…

雨女

「いよいよ、明日だね……」 私のつぶやきに、 「ええ、明日ね……」 お母さんは重々しくうなずいた。そして、心を落ち着かせるように大きな深呼吸をする。 明日、10月23日(日)は、この家の一人っ子である、私の結婚式。人生一度の晴れ舞台。 一年も前から…

真のグルメ

「諸君らは、これより立派な海上自衛隊の一員である!」 幕僚長の宣言から五日後、ようやく訪れた機会に、僕たちは興奮を隠しきれなかった。 「なあ、わかってるか? 今日だぞ」 「ああ、わかってるさ。今日だよ」 「いよいよだな」 「いよいよだ」 「覚悟は…

問題作成

さとるくんとはやとくんの兄弟がいました。 さとるくんは友達の家に、FZ750ナナハンバイクで遊びに行きました。 けれど、その10分後、忘れ物に気づいたはやとくんが日産GT-Rスポーツカーで届けに行きました。 時速300キロでぶっ飛ばすはやとく…

モンブラン

「え? モンブランって、栗のケーキでしょ? あのグルグルが巻きグソみたいになってる……」 そう返したガールフレンドに、男は、 「君とはもう付き合っていける気がしない」 と言い、店を飛び出していった。 「え? ごめん、ケーキの話じゃなかったの?!」 …

天国の役人

言わずと知れたことであろうが、天国の門というものはたくさんある。 キリスト教、ユダヤ教、イスラム教――死んだ人間の宗教に応じて、それぞれ行く場所は違う。 そして、たくさんある門のどこへ行けばいいのか、道案内をする男たちがいた。 「俺は道教なんだ…

夢追い人の町

闇夜。 荒野からやってきた少年は、夢追い人の町を見下ろしていた。 そこでひしめき合う家々は、夢追い人たちの夢そのもの。そして、その夢は真っ直ぐ伸びたり、くねくねと曲がりながら伸びていったり、皆、何とか天まで伸びようと必死で背伸びをしている。 …

画面の向こうは知らない人

カメ:おはようございます。今日もよろしくお願いします。 +エンジェル+:あ、カメちゃん、おはよう KIRITO:おはよう!(さわやか) カメ:エンジェルさん、KIRITOさん、いつも早いですね。私もこんな時間に起きてしまったので、来てみました…