冷凍庫より愛を込めて

 パタン――――パタン。

 

 あら、またアイス? アイスを取っただけなの? 冷凍庫を開けて、閉じて? 私たちのことは目に入らない? それとも、目に入れないようにしてるだけ? ええ、ええ、わかってるわよ、あなたには罪はないのよね? 悪いのはあなたの旦那さん。私たちを釣るだけ釣って、あなたに処理を押しつけた悪い男。

 

 そうよ、すべてあいつが悪いのよね。いえ、美味しそうな餌に食いついた私たちを悪者だなんて思わないでちょうだい。あなたがアイスを食べるように、私たちも餌を食べただけよ。それが釣り針についた釣り餌だったなんて、ホント、私たちったら運が悪いのね。あいつは大漁だなんて喜んでたけど、その間にも、私たちは呼吸ができずに苦しみながら死んでいったのよ。恨みに思わないほうがおかしいってものじゃない?

 

 ええ、ええ、だからわかっているって。悪いのはあいつだけ。あなたも私たちも悪くはない。けど、少しだけ想像してもらえるかしら? 一瞬の楽しみのために釣られて殺されて、それでも食べてもらえるなら嬉しいかとも思ったけれど、押し込まれたのはこの冷凍庫の奥。そりゃ、あなたが開けたときには電気も点くけれど、閉じられてしまえばここはとても暗いのよ。海の深い深い底よりも。

 

 だから――これだけは覚悟してね。あなたが扉を開ける度、私たちはあなたを見つめている。早くここから出して、せめて食卓に乗せてちょうだい。もう一度私たちに命を吹き込んで、生ゴミなんかにしないでちょうだい。

 

 冷凍庫より愛を込めて。この暗闇から救われる日を、私たち、ずうっと待っているから。

 

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