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大いなる差別

「大野が死んだ。飛び降り自殺だったそうだ」

 

 入ってくるなり、担任の教師はそう告げた。教室はその知らせにどよめいた。

 彼は生徒たちの中でとりわけ異質な存在だった。異様な姿をしていた。だから、格好のいじめの的になっていたのだ。

 人間の集団は、異質なものを排除しようとする。それは本能的なものであり、決して責められるべきものではない。

 本能は長い歴史から培われたもので、決して無意味なものではない。異質なものを排除していくことも、人間の歴史の中では必要なことだったのだ。

 しかし、これはもちろん、現代のいじめを肯定する理論ではない。

 時代は変わった。

 科学の発達により、現象には理由づけがなされ、技術の発展により、狭かった世界は考えられないほど大きくなった。

 そして、一人一人に十分な量の食料が行き渡り、生活が死から遠ざかると、人間は倫理について考えるようになった。

 集団の中の異質なもの。肌の色の違いや、手足の有無、そんなもので人は差別されてはいけない。

 

「何度話し合いをもうけたにもかかわらず、お前たちが彼をいじめたからだろう。許されることではないぞ」

 

 教師は怒りに涙をにじませてそう言ったが、当のいじめっ子たちはポカンと口を開いたままだった。

 そのうちに、彼らの一人が言った。

 

「先生、本当にあいつは飛び降り自殺をしたんですか?」

「そう言っただろう。お前たちは反省をしていないのか――」

 

 すると、教師を遮り、いじめっ子は叫んだ。

 

「でも、あいつの背中には羽根が生えてたじゃないですか!」

 

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