犬猫大戦争

 いま、世界は史上最悪の争いを始めようとしていた。

 その名は犬猫大戦争。人々は犬派と猫派の二つに分かれて争い、ヒートアップしたそれは第三次世界大戦の様相を呈してきたのだ。

 

「人間にとって最良の友は犬だ!」

 

 犬派の人々は叫んだ。

 

「その賢さ、忠実さ、どれをとっても犬にかなう動物はいない!」

「犬は人間に隷属し、しっぽを振るだけだ!」

 

 猫派の言い分はこうだった。

 

「その点、猫は気高く、独立している。猫と人間は対等だ! だからこそ、我々は猫と友達になれるのだ!」

 

 火の点いた論争は留まることを知らず、とうとう各国の首脳までもが犬派か猫派、派閥を表明するまでになっていた。

 アメリカ大統領、バラク・オバマは言わずと知れた犬派、安倍晋三は意外と猫派、ドイツのメルケル首相は家紋にドーベルマンを縫い取ることで犬派であることを顕示した。

 彼らは互いに譲ることをしなかった。やはり戦争で決着をつけるしかないのか――誰もがそう思い始めたときだった。

 一人の医者が、医学的な大発見をした。そして、その瞬間、第三次世界大戦は回避された。

 その発見とはこういうものだった。

 いま、世界中である種のウイルスが流行っている。犬好きになるウイルスと、猫好きになるウイルスだ。それはインフルエンザのようなもので、ただちに治療が必要な病気である。そして、対抗するワクチンは既に開発された、と。

 人々は言い争うことをやめて、代わりに病院に列を作った。世界は再び平和になった。

 

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