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牛丼(大盛)を拾った

「はい、どーも! YouTuberのゴンゴン太郎でえす!」

「前回までは僕の趣味でもある、カメについて語ってたんですけどね、なんと十回アップして、再生数ゼロ! ということでして……」

「趣向を変えて、今日からは別のシリーズをお送りします」

「それで、どんなシリーズにするかというと……ジャジャジャジャジャジャーン! 題して『拾ったものを食べてみようシリーズ』! イェイイエーイ!」

「今日はなんと、拾った牛丼を食べてみたいと思いまーす!」

「え? 拾ったんじゃなくて買ったんだろって? いや、これ嘘のようなホントの話。マジで路地裏に落ちてたんですよ、この牛丼――しかも大盛りが!」

「それも先客がいまして……野良猫ですよ。けど、猫に牛丼はもったいないですからね! 力ずくで奪ってやりましたよ!」

「とはいっても、腐ってないかどうかが心配だったりしますが……うん、この匂いはいけますね、多分!」

「じゃ、思い切っていってみましょう! いっただっきまぁす!」

「うんうん、全然おいしくて普通の――――んっ、うおっ、うおおおっ、オエエエエエ……」



 画面の中の男が苦悶の表情を浮かべたところで、刑事は一時停止のボタンを押した。うなだれた男を振り返る。

「……牛丼に毒を仕込んで殺すとは、考えたな。ここら一帯で殺し回ってたのはお前だろう、このビデオがその証拠だ!」

 刑事が強い口調で言うと、逃れられないと思ったのか、男は机に泣き伏した。そして、哀願するように、

「けど、刑事さん! 俺が殺そうとしたのは、あのいまいましい野良猫どもで、決して人間なんかじゃないんですよ!」

 そう言って、罪を告白したのだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム