父と娘 その1

「トゲナシトゲアリトゲトゲ、という昆虫がどうしてこんな名前になったか、という理由だがな」

 

 お風呂上がりの私がテレビを楽しんでいると、いままで番組に何の反応もしなかったお父さんが口を開いた。

 

「まず、『トゲトゲ』と名づけられた昆虫の一種である『ハムシ』がいた。しかし、その『トゲトゲ』の中に、トゲのない種類が見つかったんだ。だから、彼らは『トゲナシトゲトゲ』と呼ばれるようになった。しかし、さらなる発見で『トゲナシトゲトゲ』でもトゲのある個体が見つかったんだ。それが『トゲナシトゲアリトゲトゲ』という奇妙な名前の虫なのだ」

 

「へえ……」

 

 私は一応、うなずいてみせ、テレビの中でいまも、

 

「トゲあるの? ないの? ないと思ったら……やっぱりある! って、あるのないの、どっちなの、教えてよ、ねえ!」

 

 とボケ続ける、ハライチの澤部さんは何も悪くない、そう強く思ったのだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム