おら東京さ行くだ

「駐車場を掃除しといて」

 

 そう言われ、新人バイトの私は元気よく返事をした。

 東北の山奥から東京に出てきて、一ヶ月。焼き肉屋でバイトを始めた私に命じられた、これが記念すべき初仕事だ。

 

「よし、頑張るぞ」

 

 渡されたほうきとちりとりを手に、私はせっせとゴミを集めた。

 誰が捨てるのか、空き缶にペットボトル、タバコの吸い殻が散乱している。

 と、私はふと手を止めた。

 街路樹のハナミズキが、駐車場にまで葉を落としている。

 まだ紅葉の季節ではないというのに、きっと昨日の雨風のせいだろう。そういえば、ここへ来る道すがらのイチョウも、緑色の葉を落としていたっけ……。

 

 私はそんなことを思いながら、掃除を終え、店長を呼んだ。

 

「駐車場の掃除、終わりました。次は何をしましょうか」

 

「終わった? どれどれ……」

 

 すると、きれいになった駐車場を見た店長は、顔をしかめた。おもむろに、私のほうきを奪い取る。

 

「おい、ゴミが残ってるじゃないか! もう一回やり直せ!」

 

 店長がほうきで示した場所には、ハナミズキの葉が落ちていた。

 

(葉っぱはゴミか……)

 

 意図的にそれを掃き残していた私は、言われるがままに、しみじみと掃除をやり直した。

 私がこの大都会に慣れるには、若干、時間が必要なようだった。

 

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