遅刻の言い訳

 遅刻した三人の生徒が、教師に怒られていた。

 

「お前らなんで遅刻したんだ! 理由を言ってみろ! 藤川!」

 

「ぼ、僕は寝坊して……」

 

「目覚まし時計をかけとけ! 木村、お前は?」

 

「僕も……あの、いつもは母が起こしてくれるんですけど……」

 

「高校生にもなってお母さんに頼るな! 田中、お前は?」

 

「僕もお母さん――」

 

 そう言いかけて、同じことを言ったら怒られると思ったのだろうか、彼は一瞬黙った。それから困ったように、

 

「お母さんが本当のお母さんじゃなくて……」

 

「お母さん――え?」

 

 教師は一瞬黙り、それからやはりほかの二人に怒鳴ったのと同じように、彼に雷を落とした。

 

 田中の言ったことが本当であろうが嘘であろうが、それは遅刻したことの言い訳にはならない、そう思ったからだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム