本能寺の変

「ここが本能寺……」

 

「あの『本能寺の変』で有名な本能寺か……」

 

 修学旅行生の二人組がつぶやいた。

 

 本能寺の正面には横断幕がかけられており、そこには達筆で「本能寺の変」と書かれている。

 と、一人がそれを見て叫んだ。

 

「お、おい! これ、『本能寺の変』じゃないぞ……!」

 

 もう一人もそれを見上げ、

 

「え? ……あ、本当だ! 『本能寺の』じゃない! これは『本能寺の』だ!」

 

「どういうことだ? 『変』と『恋』じゃ全然意味が違ってくるぞ!」

 

「まさか漢字が似てるからといって、間違えたわけじゃないだろうな!」

 

「まさか! となれば可能性は一つ……」

 

「お、お前は教科書のほうが間違ってるとでも?!」

 

「可能性は捨て切れまい」

 

「う、嘘だろ……織田信長は本能寺のじゃなくて、本能寺ので死んだなんて……!」

 

「もしそうなら、誰との恋だ? 明智か? 腐女子が喜ぶ展開なのか?!」

 

「何と恐ろしい……本能寺の恋……」

 

 興奮する二人は、まだ気づいていなかった。

 

 その横断幕は「変」と「恋」をかけた、「本能寺で恋をしよう」というキャッチフレーズの婚活イベントであるということに――。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム