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対岸の火事

 二人の中学生が、土手を歩きながら川を眺めていた。

 しばらくして、その一人が口を開いた。

 

対岸の火事って言うだろ?」

 

「川向こうの火事は、自分には無関係ってことか?」

 

 もう一人が答える。

 

「そうだ」

 

 中学生はうなずき、

 

「情景としては、対岸の火事を眺めて、優越感を感じてるこっち側のやつがいるわけだ。そいつは、自分が安全な場所にいるもんだから、油断している。しかし、だ」

 

「しかし?」

 

「そいつのにやけ顔がむかつくから、俺は川に油を流すことにした。そしたらどうだ、川向こうにも火が燃え移ったもんだから、そいつも急に慌てだして! あっはっは、あいつの顔! あっはっはっははは!」

 

 突然笑い出した彼に、もう一人は薄気味悪そうな顔をした。

 静かな夕暮れには、彼の笑い声だけが響き続けた。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム