化粧技術の向上

「信じがたいことですが、これは同一人物です」

 

 議長の言葉に、男たちはどよめきの声を上げた。

 

 スクリーンに映し出された二枚の写真。

 そこに写る二人の女性は、まったく同一人物だとは思えない。

 

 右の女性は二重まぶたに大きな瞳、鼻筋は通って、くちびるはふっくら艶やか。

 対して、左の女性は一重の糸目に、鼻は潰れ、薄いくちびるはそのまま幸の薄さを表しているようである。

 

「どちらが美人か――などと、我々はあえて言いますまい。男は美人が好きだ。しかし、それは女性がイケメンを好むのと同じくらい、当たり前の自然の摂理なのです」

 

 議長は続けた。

 

「しかし、我々が懸念するのはそこではない。彼女が美人か不美人か、そんなことは脇に置いておきましょう。それよりも問題は、女性が我々男性をだまそうとし、それを我々が見抜けないことなのです。そこで――」

 

 数百人はいるだろうか。

 真剣な眼差しの男たちを見回し、議長は高らかに宣言した。

 

「ここに『女性の化粧技術向上に伴い必要とされる男性側の洞察力を磨く会』、第一回の開会を宣言します!」

 

 パチパチパチパチ――彼の熱意に、惜しみない拍手が強く応えた。

 

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