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ポニーテール

「あっちゃん、その髪型!」

 

 月曜日、いつものように登校してきた私を見て、りっちゃんが青ざめた。

 

「え? どうしたの……ってか、そんなに似合ってないかな、ポニーテール」

 

 いままでは髪を下ろしていたのだけれど、夏になるとさすがに暑い。

 だから、今日は結んできたのだが――。

 

「ポニーテール! ポニーテールだって知っててやってるの、その髪型!」

 

 私の言葉に、あっちゃんはますます青ざめた。

 そして、おもむろにポニーテールを持ち上げ――ズム、後頭部を指で突く。

 

「痛っ。ちょっと、綺麗にまとめたんだから、そんなことされたらぐちゃぐちゃになっちゃう――」

 

「ここ」

 

 しかし、あっちゃんは真面目さと悲愴さが入り混じったような顔で言う。

 

「え?」

 

「だから、ここらへん」

 

「何が?」

 

 私が顔をしかめると、あっちゃんはぐっとあごを引いて、

 

「これが本当にポニーテール馬のしっぽだとしたら……肛門の位置は、ここ。ここらへん」

 

「…………」

 

「ここらへんから、馬糞が出る」

 

「……うん」

 

 しばらくあっちゃんと見つめ合い、私はうなずいた。

 

「うん、わかった。――で、あっちゃんさあ、昨日の宿題やってきた?」

 

「え? 英語のやつでしょ? やったよ」

 

「違うよ、数学だよ」

 

「数学なんてあったっけ?」

 

「あったよ、何言ってるのーもう」

 

 私は数学の問題集を取り出して、さりげなく話題を逸らした。

 

 ときどき変なことを言うけれど、あっちゃんは小学校時代からの大親友。

 私たちは、この先も永遠に、ずっと友達なのだ。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム