おとななこども その3

 ♪一年生になったら

  一年生になったら

  友達100人できるかな――――

 

 幼稚園の教室から、楽しそうな歌が聞こえてくる。

 歌っているのは、年長組。

 もうじき小学校に進学する、子供たちだ。

 

「はい、みんな上手に歌えたね! 早く一年生になりたい人ー?」

 

 はーい、可愛い声が一斉に答える。

 

「じゃ、友達100人つくっちゃうぞーって人ー?」

 

 はーい、再び元気よく手が上がる。

 

 と、その元気な声の中に、一人だけ体育座りをした子供を見つけて、先生は首をかしげた。

 

「あれ、あなた、見たことがない顔だけど……?」

 

「……友達100人なんてできるものか」

 

「え?」

 

 子供のつぶやきに、先生は思わず笑顔で固まる。

 子供は続けて、

 

「人間が一生に出会う人の数が3万人。知り合い程度が3000人、親しく会話を持つのが300人、友人が30人、親友が3人と言われている」

 

「あ……あなたはどこの子なのかな? お家はこの近所?」

 

 先生が必死の作り笑顔で言うと、子供は右の口角だけを上げて、

 

「一年生になったからといって、一生かかってできる3倍以上の友人ができてたまるものか」

 

 そう言い残すと、黄色い帽子を頭に乗せたまま、教室のドアから出て行った。

 

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