白いたい焼き

 駅前の植え込みで、二人の男子高校生が話していた。

 

「白いたい焼きってあったじゃん?」

「うん」

「あれってさ、白じゃなくて――」

「黒もあった。抹茶色もあった。珍しいところでは赤もあった」

「……何だよ、まだ言い終わってないのに」

「けど、あたりだろ? 白じゃなくてほかの色も合ったらいいのにって」

「まあ、そうだけど」

「じゃ、いいじゃん」

「いや、でも続きがある」

「あ?」

「俺は色だけじゃなくて……そ、そう、鯛じゃなくてもいいんじゃないかって思ったんだ」

「ホントか? いま考えたんだろ?」

「違うって。なあ、鯛以外。ってか、なんで鯛なの?」

「俺が知るかよ」

「そう言わずに」

「知らないって」

「ちぇっ、意外ともの知らずだな、お前」

「何だよ、もの知らずって。親知らずみたいな」

「このもの知らずっ!」

「何かそう言われると、すごいバカにされた気がする」

「もの知らずがっ!」

「何だと、お前だってもの知らずだろうが。このもの知らずっ!」

「……うわ、確かにちょっと傷つくな。もの知らず」

「だろ? そう言ってるじゃん。あ、鯛以外には金魚焼きとかあるらしいよ」

「なにっ、金魚?!」

「築地にはマグロ焼きがあるって」

「ななっ、マグロだと?」

「うん、ちゃんとあんこ入ったやつ」

「嘘だろー、インターネットは俺と違って物知りだなあ」

「いや、インターネットって人とかじゃないから。知恵の集合体だから」

「まじかよー、まっいいか。もの知らず同士、マグロ焼きでも食べに行く?」

「だから、もの知らずって言うなよ。まあ、行くけど」

「おう、行こうべ」

 

 暇で仲のよい二人組は、揃って日比谷線に乗り込んだ。

 十代の頃というものは、このような得がたき友の存在に気づくことなく、あとになって、必ずその時代を懐かしむときが来るのである。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム