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ペペルー族のおもてなし

「ア、マ? カテルボルガ、ポイト、マ?」

「あ、ありがとうございます」

 

 ぺぺルー族の男性に乾いた衣服を渡され、俺は頭を下げて礼を言った。

 ここはジャングルの奥、前人未踏の地。

 

 俺は、同じ研究室の仲間三人と、この未開の地にやってきた。

 

 ……のはいいのだが、三人とはぐれた俺は一人でジャングルをさまよい、やぶれかぶれになっていたところを、この謎の現地人――ぺぺルー族に助けられて、その村に迎え入れてもらうことができたのだった。

 ぺぺルー、とは、ここの言葉で「どうぞお召し上がり下さい」という意味らしい。

 村へ入るとき、その村長らしき人から何度も「ペペルー、ぺぺルー」とお酒を差し出されたので、ペペルー族と俺が命名した。

 

「タスマラ、イー」

「はい、着替えます、着替えます」

 

 ぼんやりしている俺に、男性が早くしろとせき立てる。俺は後ろを向いて濡れた服を脱ぐと、彼と同じ、部族の服に着替えた。

 原色の布が美しい、不思議な服だ。もしかしたら、祭祀用の服かもしれない――俺はそう考えて、幸運に改めて感謝した。

 未開の部族が、見知らぬ人間を村に招き入れるなど、あまり聞いたことのない事例だ。しかもどうやら歓待されている。

 広場にはキャンプファイヤーのような火が燃えさかり、食事のいい匂いが流れてくる。村人たちは、どうやら俺を歓迎する会を開いてくれているようなのだ。

 

 着替え終わると、俺は広場に連れて行かれた。そして、村長の横に座るように言われる。

 ここまで親切にしてもらうと、逆に気味が悪いのだが、彼らの善意を無にするわけにはいくまい。俺は大人しく腰を下ろす。すると、村長が立ち上がり、何やら演説を始めた。

 

「カイスナボウメイー、ムナカポナメー、ポイトマ、ポイトマ、ペペルー、イナモラ……」

 

 何を言っているのかはわからないが、ちらちらと俺を見ている。と、大きなフライパンのようなものが運ばれてきた。火にかけられる。料理はこれからなのだろうか。

 と、そのとき男たちの声が聞こえ――そちらを見た俺は驚いた。

 

「西島! 佐伯、遠藤!」

 

 それは俺がはぐれた三人だった。

 

「よかった、お前らも助けられて――」

 

 そう言ったときだった。ふと、火のそばに祀られた岩に描かれた絵が目に入った。

 それはペペルー族にとっての神なのだろうか。裸で髪を振り乱し、そのペニスは天をつくほどにそそり立っている。

 

「これは、まさか……」

 

 俺は戦慄した。はぐれた三人を見る。

 彼らの服はどろどろで、着替えてこざっぱりとした俺とは大違いである。

 そして何よりその両手両足は、獲物である獣のように縛られていて――。

 立ち尽くす俺に何を勘違いしたか、村長が笑顔で三人を指すと「ペペルー(どうぞお召し上がり下さい)」と言った。

 

 三人とはぐれ、やぶれかぶれになっていた俺は、ジャングルで裸になり、ペニスに竹をかぶせて「チンコ魔神!」と叫びながら踊り狂っていた。

 

 まさか、それが運命の分かれ目になるとは――呆然としたまま、俺は三人がフライパンに投げ込まれるのを見ていることしかできなかった――。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム