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隠し味

「あ、エリエリ、おはよう」

 

 一人の女子高生が、友達に声をかけた。

 

「そういえば、エリエリ、昨日あのお店行ったんでしょ? あそこにできた、新しいとこ」

 

「あー、うん」

 

「どうだった? 美味しかった? 美味しかったら今度行きたいなーと思って――」

 

 すると、「エリエリ」は目をそらした。そして、

 

「隠し味がね……」

 

「うん?」

 

 女子高生が首をかしげると、「エリエリ」は暗い顔で、

 

「隠し味が隠れてないの……」

 

「……そっか」

 

 女子高生は沈黙した。

 電車内も沈黙に包まれた。

 

 隠し味が隠れていない。

 

 その言葉は十分すぎる破壊力で、我々にその店のまずさを教えてくれたからである。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム