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砂浜のダメ男

 皆に「あいつはダメ男だ」と言われる男がいた。

 男は勉強もせず、かといって働きもせず、一日中浜辺を歩き回っていたからだ。

 

 しかし、あるとき、男の行動に興味を持った者がいた。

 天才とは奇人変人に見えるもの。

 一日中浜辺を歩いているのには、何か意味があるに違いないと思ったのだ。

 彼は男に近づくと、

 

「君は何をしてるんだい? 毎日毎日歩いているんだ、何かを探しているんだろう?」

 

 すると男は、

 

「なぜ、それを?」

 

 と驚いた。そして、あたりを見回すと、小声で打ち明けた。

 

「いいですか? ここだけの秘密ですがね……」

 

「ああ」

 

 期待を込めて、彼はうなずく。男は、ますます声を小さくして、

 

「実は俺、いじめられている海亀を探してるんですよ。もし、そいつを見つけたら、助けてやって、竜宮城に行くつもりです。知ってますか? 竜宮城に行けば衣食住の心配をせずに一生を楽しく――」

 

「わかった」

 

 彼は話し続けようとする男を遮って、その場を立ち去った。

 あいつはただのダメ男だ――彼も同じ結論に至ったからだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム