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お花畑

 どこまでも色とりどりの絨毯のように広がる、お花畑。

 菜の花にタンポポの花、野菊の花に、アザミの花。

 その上を、ひらひらとモンシロチョウが舞っている。

 いや、モンシロチョウだけじゃない。

 あっちにはアゲハチョウ、向こうにはシジミチョウ、こっちにはルリタテハ

 日差しはぽかぽかと暖かく、優しいそよ風が花を揺らす。

 見ているだけで自然と笑顔が浮かんでくるような、そんなのどかな光景――――。

 

       *

 

「へえ、すごい良さそうじゃん。それ、どこに行ったら見られるの?」

 

 言葉を尽くした私の説明に、彼は呑気に聞き返した。

 

「北海道とか? 俺も見てみたいなあ」

 

「うーん、どうだろ?」

 

 しかし、私は笑顔で首をかしげた。

 

「あなたには見えないかもね。だって、このお花畑、あなたの頭の中にあるやつだからさ」

 

「ん? それ、どういう意味?」

 

 問い返した彼には答えず、私はまとめた荷物を持って、マンションを出た。

 

 「絶対儲かる話」にノコノコとついていき、会社を辞めてネズミ講の構成員になった挙げ句、ローン付きのラッセンの絵を三枚を抱えて帰ってきた新婚の夫に言うべき言葉なんて、私にはこれ以上見つからなかったからだ。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム