そこはかとない不安感

 田舎から東京に出てきた男二人が、ある夜、道に迷ったときの話である。

 

「……なあ、感じないか?」

 

 一人の男が言った。終電もなくなった午前1時過ぎ、あたりには人影もまばらだ。

 聞かれて、男の友人も周囲を見回した。

 

「……ああ、感じる。なんていうか、その辺の闇に何か恐ろしいものがいるような……」

 

「お前もか。いや、俺は霊感とか幽霊とか、バカにしてたほうなんだが」

 

「俺もだ。なのに、何か……」

 

「ああ、何かを感じる。何だろう、恐ろしいものが闇に潜んでいそうな……」

 

「ああ、そこはかとない不安を感じる、というか……」

 

「東京には古戦場跡が多いと言うし、ここもそうなのかもしれないな……」

 

 二人は、おっかなびっくり夜道を歩く。

 

 土地勘のない彼らは知らないことだが、実はここは新宿二丁目

 

 古戦場跡ではないにしろ、魑魅魍魎がうごめいていることに変わりはないのである――。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム