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カレンダーの嘘つき

 それは最初からわかっていたことだった。

 カレンダーをめくると、13日の部分に赤い丸のついた10月のカレンダーが現れた。

 

『翔太と付き合い始めて4周年記念日!』

 

 そこにはたくさんのハートと共に、浮かれた文字でそう記されている。

 

 そう、10月13日は、翔太と私の4周年記念日。

 右も左もわからなかった新人の私を、優しく指導してくれた会社の先輩が翔太で、私たちはすぐに付き合い始めた。

 

 二人で過ごす一年は瞬く間に過ぎ、それから二年、三年と順調に時は過ぎた。

 そして四年目。

 翔太は初めてのデートで行ったレストランで、プロポーズをしてくれた。もちろん私はOKした。

 私たちは幸せになるはずだった。それなのに、酔っぱらいの車にはねられ、彼は突然私の前から消えてしまった。

 

 それはもう半年も前のこと。

 だから、カレンダーに書かれたこの日を、私はもう祝うことがない。この日はもう記念日じゃない。

 

「……カレンダーの嘘つき」

 

 私はつぶやいて壁を叩いた。

 

「嘘つき!」

 

 もう一度つぶやくと、涙があふれ出してきた。

 

 もちろん、カレンダーが悪いわけじゃない。誰も知り得ない未来の予定を、先に書き込んだ私が悪いのだ。

 それでも、私はカレンダーを責めた。浮かれてペンを取った、過去の無邪気な自分を呪った。

 

「嘘つき……」

 

 とうとう私は、カレンダーをぐちゃぐちゃに丸めて、ゴミ箱に投げ捨てた。

 それから子供みたいに泣き続けた。

 

 新品のカレンダーを買い、そこに予定を書き込んだとしても、その日が来るわけではないことを、私は苦しいほどに思い知らされたのだった。

 

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