察しのいい女

「いや、ホントにいい女だったんだよ。気が利いて、察しも良くてさ。こっちが何も言わなくても、先回りしてテキパキ仕事をこなしてくれて、いつも会議の資料は揃ってるし……いや、仕事だけじゃないな。俺が何か飲みたいなってタイミングで、コーヒーを淹れてきてくれるような、そんな女だったんだ……」

 

 居酒屋で酔った男が、ぶつぶつと愚痴を言っている。相手の友人は苦笑いして、

 

「で、勘違いしちゃったわけだ。その子がお前のこと好きだって」

 

「いや、勘違いじゃないよ。ってか、あれは誰でも勘違いするよ。机の上片付けてくれたり、俺の分まで弁当買ってきてくれたり、そういうことされたらさ」

 

「けど、だからっていきなり求婚するのはやりすぎだろ」

 

「そうかもしれないけど……でも、結局求婚もできずじまいだったんだ」

 

「ん? そうなのか? でもお前、振られたって……」

 

 友人が首をかしげると、男は、

 

「察しのいい女だったって言っただろ。だから彼女、『好きです結婚して下さい』って俺が言う前に、『嫌いです求婚しないで下さい』って言ったのさ」

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム