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桃二郎

 ――鬼ヶ島で鬼を退治し、金銀財宝を持ち帰った桃太郎。喜ぶおじいさんとおばあさん。戦友に別れを告げ、野生に返る犬、サル、キジ。しかし、そのそのとき既に〈計画〉は動き始めていた――。

 

「桃太郎、おはよう。今日はわしと山へ柴刈りに行くんじゃろう?」

「お、おじいさん! 桃太郎が、桃太郎がいないわ!」

「な、なにっ?」

「鬼が……きっとこれは鬼の復讐よ!」



――――取り戻したはずの日常が――――



兄貴ッワンッ? どこ行っちまったんだワォォォォォン兄貴ワン!」

お前んとこもかウキキキッ……俺らの兄貴もウキキキ木のうろに隠した酒をウキーッウキーッ取りに行くってウキキ言い残したままウキャキャキャ……!」

ああっケーン! これは兄さんケーンケンの尾羽ケンッ……!」



――――足元から、崩れ去る――――



「ばあさんっ! いかん、もう一度川に桃を拾いに行くなど!」

「止めないで、おじいさん! 私、どうしても行かなきゃならないのよ!」

「ばあさんっ、ばあさぁぁぁぁぁぁん!」



――――正義か、悪か――――



「痛っ……頭がガンガンする……はっ、ここはどこだ? おじいさんは? おばあさんは?!」

「やっと気づいたか。桃太郎?」

「誰……お、お、お前はっ……!」

「久しぶり、と言うべきだろうね。覚えていてくれて嬉しいよ」

「俺を殺すつもりか?」

「まさか。君は初めから〈計画〉の一部。生きていてもらわなければ困るよ……まだ、ね」



――――消えた桃太郎、動き出した〈計画〉、そして、救世主は再び桃から誕生する――――



「おんぎゃあ、おんぎゃあ、おんぎゃあ!」

「なんて可愛い……。ほぉら、いい子だから泣き止んで……」

「おお、桃太郎の生まれた時を思い出す……ばあさん、この子の名前は何とするんじゃ?」

「そうね、この子の名は……」



――――桃から生まれたおばあさんの次男、その名は――――



「桃二郎。この子は、桃二郎よ……」



――――それから時は経ち――――



「あの鬼ヶ島に、兄さんはいる。僕の夢は、みんなと一緒に兄さんをあそこから助け出すことだ」

わかってるってワオーン、ワン

絶対助けようぜウキッウキキッ

そのときはケーンお供しますよケンケン

「……ありがとう、みんな」

 

 ――――彼は旅立つ。お腰にきび団子をつけ、犬、サル、キジをお供につれて、顔も見たことのない兄を救うために。

 その彼の名は――



――――MOMOZIROU桃二郎~another story of MOMOTARO~――――

 

 2016年7月1日(fri) 魂の物語、解禁。

 

      *

 

「ねえ、この映画面白いのかなあ?」

 

 テレビに釘付けになっていた私が聞くと、スマホをいじっていた彼氏は興味なさそうに、

 

「面白いんじゃない? だって、au協賛でしょ。美加の好きな俳優も出るよ」

 

「でも、桃太郎松田翔太、最初から捕まっちゃってるからなあ……」

 

 私は答えながらも、1日の予定を頭の中に思い描いた。

 

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(タイトルはakuyaネコ型猫様にご提案いただきました。ありがとうございます。引き続きタイトル案募集中です)

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム