畳の上で死にたい

 畳の上で死にたい、という要望に応えて、救急車のストレッチャーを畳敷きにする、という案が出された。

 

「わかってます、救急車は人の命を助けるもので、そこで亡くなる人がいてはいけないということも。けど、現実には亡くなってしまう人もいる、だからこそ、僕は……!」

 

 それは熱のこもった意見だったが、やはり縁起が悪いということで、却下された。



「わかってます、手術は人の命を救うもので、そこで亡くなる人がいてはいけないということも。けど、現実には――」

 

 彼は次に、病院の手術台を畳敷きにするという案を出したが、やはり縁起が悪いのと、衛生面から却下された。

 

 しかし、彼はめげずに、今度は病院のベッドを畳敷きにすることを提案した。

 それから分娩台、さらには診察台までも――。



 そんな彼は、畳屋の四代目。

 先細る一方の業界を憂う、今時珍しい熱血漢なのであった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム