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魔王と生娘

 誰もが恐れる魔王の前で、その女性は腰に手を当てて思い切り顔をしかめてみせた。

 

「はあ? いまさら何言ってるのよ? 『この村の生娘を我が嫁に差し出せぇぇぇ!』って言ったのは、そっちでしょ、ねえ、みんな?」

 

「ホント、その通りよ」

「言ったわよねえ?」

「ってか、その言い方すごい似てるわあw」

「うん、似てる似てる」

「よっ、ものまねグランプリ優勝経験者!」

 

「ホント? じゃ、リクエストにお応えして……『村の生娘を我が嫁に差し出せぇぇぇぇ!』」

 

「あっはっはっは、似てる、さっきより似てる!」

「『差し出せぇぇぇ!』の息吐く感じが似すぎ!」

「やだぁ、おかしくて笑いが止まんない!」

 

 笑い転げる女性たちを前に、魔王は唖然とした。

 村の生娘、と言えば、花も恥じらう乙女のことだ。だというのに、こいつらは何だ? 恥じらうどころか、ワシのものまねをして喜んでいる。

 

「ははあ、わかったぞ……村のやつらめ、処女ではないやつらを寄越したのだな? もしそうなら、ただじゃおかんぞ……」

 

 魔王は納得すると、彼女たちが処女か経験済みかを見極める大技を繰り出した。

 

「魔王EYESアイズ!」

 

「やだっ、今度は何?」

「いま、あいつ、目が光ったわよね?」

「『魔王EYES!』だって!」

「ひゃっはっは、それ、似てる!」

「ってか、魔王EYES! って、ネーミングセンスがヤバすぎるわあ!」

 

 再び爆笑し出した彼女たちを前に、魔王は困惑した。

 魔王EYESによれば、彼女たちは完璧な処女。まさに注文通りの生娘だったのだ。

 

「ん……? しかし……生?」

 

 魔王は魔王EYESで得た情報――その年齢の欄を見てつぶやいた。

 

「37歳に42歳に35歳……お、お前に至ってはごじゅう……?! 処女は処女だが、とは言えない――――」

 

 しかし、魔王は賢明にもそこで口を閉じ、黙って彼女たちを受け入れることにした。

 

 なぜなら、生たちの年齢を口にした瞬間の彼女たちの顔!

 そこからは完全に笑みは消え、まるで即死魔法のような暗黒の眼差しが向けられたからである。

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タイトル「魔王と生娘」は道草屋さんからリクエストいただきました。ありがとうございました。引き続きタイトル案を募集しています。

 

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