意味のない話

「最近さあ、おしゃべりだった奥さんが全然話してくれねえんだよ」

 

 酔った勢いで、サラリーマンが愚痴をこぼした。

 

「そりゃ俺も悪いこと言ったかもしれないけどよお、まったく無口になることないのにさあ」

 

「ふうん、お前、何を言ったんだ?」

 

 同僚が聞くと、男は、

 

「いや、こっちも仕事で疲れてるのに、今日はママ友とランチに行ったとか、子供の塾の先生が結婚するとか、そんなことをぐちゃぐちゃ言ってくるからよお、意味のねえ話をするな、って怒ってやったのよ」

 

「うん、奥さんがしゃべらなくなったのはそのせいだな」

 

 同僚はうなずいた。

 

 なぜなら、意味のない話、それがおしゃべりというものの本質だからである。

 

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