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画面の向こうは知らない人

 カメ:おはようございます。今日もよろしくお願いします。

 

 +エンジェル+:あ、カメちゃん、おはよう

 

 KIRITO:おはよう!(さわやか)

 

 カメ:エンジェルさん、KIRITOさん、いつも早いですね。私もこんな時間に起きてしまったので、来てみました。

 

 KIRITO:夜中の3時に起きるとかww 寝るの早すぎwww 可愛いから許すけどwww

 

 +エンジェル+:俺は逆に起きるのがミッドナイト?的な?

 

 カメ:そうなんですか。みなさん、すごいですね。

 

 +エンジェル+:子供は真似しちゃダメ!

 

 KIRITO:じゃ、カメちゃんも来たし、さくっとドラゴン退治でも行っときますか?(提案)

 

 カメ:そうですね。私、このあいだ拾った装備をつけてみます。

 

 +エンジェル+:お、いいね! (エロい衣装、と思ってることは内緒)

 

 カメ:エンジェルさん、恥ずかしいです。でも、こっちのほうが前の装備よりも防御力が高いので……。

 

 KIRITO:いいじゃんいいじゃん(適当)よし、じゃ行くぞー!(リーダーっぽく)

 

       *

 

 これは、とあるオンラインゲーム上でのおしゃべりであり、「エンジェル」と「KIRITO」は現実では33歳の引きニートと、40歳のパン工場勤務員である。

 

 二人は、そんな自分たちにも丁寧に優しく接してくれる「カメ」が気になっていて、できることならば彼女と付き合いたいと思っていた。

 

 しかし、彼らもそれなりにネットの事情に詳しい。

 

 「カメ」が実は「ネカマ」――つまり、女の子の振りをしたオッサンではないかと疑い、恋心を打ち明けられずにいた。



 しかし、ここで明かしてしまえば、彼女は正真正銘の女性である。しかも、独身だ。

 

 ただ一つ、障害があるとすれば、礼儀正しくて優しい「カメ」こと、井上カメ子さんは御年81歳で、いわゆるコンピューターおばあちゃんだということだけであった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム