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はたらくくるま

 ある朝、幼稚園にて。絵海ちゃんパパの質問に子供たちは、

 

「うちのパパ、ダンプの運転手さんだから、運転席に乗せてもらったことあるよ!」

「あ、オレもある!」

「オレなんか、トラクターに乗ったことあるぞ!」

「うちのおじいちゃん、ショベルカー動かせるよ!」

 

 と、一人の園児が思い出したように、

 

「そういえば、ずっと前の夜にねえ、まことくんちのショベルカーがお山を掘ってたんだよ。ピカーっておめめが光ってて、すごくかっこよかった!」

 

 それを聞いて、絵海パパは、

 

「それはまことくんのお父さんが乗ってたのかい?」

 

「うん、そうだよ! 暗かったから、僕には気づいてくれなかったけど……」

 

「そうか、ありがとう」

 

 絵海ちゃんパパはそう言うと、先ほどの笑顔はどこへやら、泣く子も黙る鬼のような形相で後ろの部下を振り向いた。

 

「聞いたな? 裏を取れ」

 

「は、はい! 田之口警部!」

 

 子供たちの前では、笑顔で優しい絵海ちゃんパパ。

 しかし、その正体は捜査一課の鬼警部。

 澤本まことの母親・葉子の行方不明を不審に思った警部の、これは園児たちへの事情聴取だったのだ。

 

「じゃあね、絵海ちゃんのパパ!」

「またね!」

 

「ああ、またお話を聞かせてくれよ!」

 

 再び絵海ちゃんパパに戻った警部は、正体を明かすことなく、覆面パトカーで署に向かった。

 

 子供たちが安心して暮らせる町をつくるため、絵海ちゃんパパ――じゃない、田之口警部は今日も事件解決に勤しむのである――。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム