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結ばれない関係

「あたしと彼、お互いに愛し合ってはいるけど、絶対に結ばれない関係なの……」

 

 彼女は遠い目をしてそう言った。

 時々「幽霊が見えるの」という、いわゆる不思議ちゃんな彼女だったが、それでも僕は好きだった。

 だから「好きだけど結ばれない彼がいる」、そう聞いた僕は、思わず嫉妬してこう言った。

 

「絶対に結ばれない関係? そんなのあるわけないだろ。例えば、少女漫画にありがちな『あたしたち兄妹だから』ってやつも、そりゃ法律とか倫理的にはあれかもしんないけど、物理的に結ばれることは可能だし、不倫だってそうだよな? 離婚すればいいだけの話じゃん。そういうのは『絶対に結ばれない関係』なんかじゃないわけ。悲劇のヒロインぶって、行動してないだけの話なんだよ」

 

「行動してないだけ……?」

 

「そうだよ。口先だけで『愛』なんて言ってるだけで、世間体とか法律とかを捨てられるほどの想いじゃないってことだろ」

 

 僕の言葉に、彼女は驚いたようだった。それから「ありがとう、行動してみる」というと、急ぎ足で去って行く。

 恋敵を助けた形になっちまったか――その背中を見送ると、僕はため息をつき、踵を返した。

 相手が僕じゃなくても、彼女が幸せになればいい、そう思ったのだ。



 その翌日、僕は鳴り響く携帯の音で目が覚めた。

 寝ぼけながら電話に出ると、彼女と共通の友人が息せき切ってこう言った。

 

「おい、彼女、昨日自殺したって聞いたか?! 何でも、幽霊の彼と結ばれたいって、わけのわからんことを言ってたそうだぞ――――」

 

 僕は生まれて初めて、全身から血の気が引く音を聞いた。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム