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元気が一番

「今日、涼太の先生と面談があってね」

 

 家に帰ると、陰鬱な顔の妻がいた。夫はネクタイを外しながら、

 

「涼太、学校でどんな感じだって?」

 

 そう言うと、妻は両手で顔を覆い、

 

「先生が……元気が一番ですね、って」

 

「元気が一番? まあ、そりゃそうだな。涼太は健康だし、それが一番だろ。昔っからあいつはそう言われてきたし」

 

 夫が言うと、妻は机を叩いて立ち上がり、

 

「あの子、高校三年生よ?! 元気が一番で許されるのは、小学生まででしょ?!」

 

 そう言うと、妻は再び椅子に座り、頭を抱える。

 

「後藤さんとこの息子さんなんか、夜中まで受験勉強してるっていうのに……」

 

「まあ、そうだな……」

 

 夫はうなずき――息子さんは元気でいい子ね、そう言われて嬉しそうに笑っていた遠い日の妻の笑顔を思い出していた。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム