show must go on

 ――今日も芝居の幕が上がる。

 

 舞台が明転し、役者が最初の台詞を口にする。

 いつもの通りに始まった舞台を、私は袖から見つめていた。

 

 劇団「櫂船かいぶね」、私はその舞台監督。

 

 たとえ親が死んだとしても、役者は舞台に出なければならない――それと同じに、たとえ何が起ころうともこの芝居の幕を上げ続ける、それが私の仕事であり、重大な使命である。

 

舞台監督ブカンさん、ちょっと」

 

 異変が起きたのは、前半の山場に差しかかったころだった。

 小声で呼びかけてきたのは、受付のスタッフ。どうした、声を殺して問い返すと、

 

NASAの発表によると、隕石らしきものが日本に落下し、北海道の道北地域と千葉が滅びたそうです!」

 

「なに?!」

 

「それも、日本だけじゃありません! 世界中で同じような事件が発生しています! しかも隕石は複数落下予定ですが、詳細な位置はパニックを恐れてか、発表されていないんです! もしかしたら、この劇場に落ちるかも……!」

 

 どうしましょう、青ざめるスタッフに、「そんなことは決まっている」、俺は小さくそう言うと、静かに舞台に目を戻した。

 

 The show must go on――たとえ外で何が起こったとしても、芝居の幕は決して下ろしてはならないのだ――――

 

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