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初夏の味

「庭にブルーベリーがたくさんできたので、ジャムにしようと思いまぁす! それでは、まずよく熟したブルーベリーをボウルにたくさん集めまして……」

 

 真子ちゃんは嬉しそうに紫色の実を摘むと、その一つを口の中に放り込んだ。

 

「んん~! 甘酸っぱくて最高の味! ちょっと美味しすぎる~!」

 

 そして、もう一つ。

 

「このお日様の光がぎゅっと詰め込まれたような味ときたら……」

 

 そして、またまたもう一つ。

 

「はあ、また摘みたては香りが爽やかなんだよなあ ほら、ミーコも一個食べてみなよ~」

 

 コロン、縁側に丸い果実が置かれる。

 

(そんなに食べてばっかりいたら、ジャムにする分がなくなっちゃうぞ……)

 

 僕は申し訳程度にその実に鼻をくっつけると、ふにゃあ、大きなあくびをした。

 梅雨明けの空に、葉っぱの緑が輝いている。そのみずみずしい景色の中で真子ちゃんが、もう一つ、もう一つだけ、とつまみ食いを続けている。

 その姿があまりに幸せそうで、

 

(まあ、いいか……)

 

 僕は目を閉じ、再び穏やかな眠りについた。



 ブルーベリーは初夏の味。

 ジャムにしてしまうなんてもったいないと、最初から僕は思っていたのだ。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム