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愛妻弁当

「や、高木くん、昼は弁当かね」

 

「結婚したばかりだから、愛妻弁当というやつだろう。うらやましいな、こいつ」

 

「どれどれ、中を見せてみろ……何だ、彩りがあんまりないな」

 

「もっと奥さんに料理を頑張ってもらわないと」

 

「これじゃ、オレの作る弁当と変わらんな」

 

「それとも、共働きだから文句も言えないか」

 

「いやいや、いまの時代、専業主婦なんか贅沢だろう」

 

「そりゃそうだ。仕事と家事、両方できないと」

 

「しかし、そういういい女はなかなかいないからな」

 

「だから料理が苦手なくらい、我慢しないと」

 

「そうそう、料理はやれば上達するから」

 

 何がおかしいのか、はっはっは、と笑い声を上げて、独身組がランチに出て行く。

 当の「高木くん」はその後ろ姿を見送り、小さくため息をつく。と、LINEの着信音が小さく鳴った。

 

〈ともくんがつくってくれたお弁当、おいしいよ! 明日は私の番だから、お楽しみに〉

 

 楽しみにしてるよ――高木くんはそう返信しながら、顔に幸せそうな笑みを浮かべた。

 

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