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面白い話

「ねえ、僕って本当に北国の民族ノルディックなの?」

 

 青い目にブロンドの坊やが聞いた。同じ目と髪の色をした母親は、

 

「ええ、そうよ」

 

 優しく答える。しかし、坊やは困惑したように、

 

「僕のお父さんも?」

 

 坊やの問いに、やはり母親は優しく、

 

「そうよ」

 

「僕のお父さんのお父さんも?」

 

「もちろん」

 

「じゃあ、僕のお父さんのお父さんの、そのお父さんも?」

 

「ええ、もちろんそうだけど……おかしな子ね、どうしてそんなことを聞くの?」

 

「だって、お母さん」

 

 坊やは答えた。

 

「僕、いま、とっても寒いんだもの!」

 

        *

 

 「面白い話」を得意げに話し終わったフィンランド人に、日本人たちは互いの顔を見合わせながら、おざなりに笑みを浮かべた。

 それを見たフィンランド人は、どうやらこの日本人たちには自分の英語が通じなかったようだ、と考えた。

 

 なぜなら、この話は彼の鉄板ギャグ。

 

 先祖代々北国に住む民族だというのに、なぜ自分は寒さを感じるのか、と悩む坊やの話に、フィンランドの友人たちは爆笑したものだが――言葉が通じないのなら仕方がない。

 彼も曖昧に笑ってその場をやり過ごした。



 しかし、日本人たちが考えていることは――そう、同じ日本人のあなたならわかりますね?

 完璧に翻訳されたとしても、きちんとした解説がつけられたとしても、何が面白いのかがまったくわからない。

 それは文化の違いなのか何なのか、とにかくこんな話を聞かされても、どんな反応をしていいやらわからない。

 

 これなら、まだ勢いで押し切ってくれるアメリカンジョークのほうがましだ――日本人たちはそう考えていたのであった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム