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RadioとTV

「壊れかけのレディオ、って気取ってますよね」

 喫茶店に流れた音楽に、ふと彼が口を開いた。

「レディオ、じゃなくてラジオでしょう。ここは日本なんだから」

「そうですよね、レディオじゃなくてラジオですね。テェレビ、じゃなくてテレビだし」

 そんなのはどっちでもいいじゃないかと思ったが、私は一応彼に合わせて笑う。

「は?」

 すると、彼はしかめ面をして、

「テェレビ、ってなんですか。そこはティーヴィーしょう」

「……あ、そっか。たしかに。テレビはティービーか」

 巣で間違えていた私が笑うと、彼は、

「違います、ティーヴィー」

「……ティービー」

「ティーヴィー」

「ティービー?」

「ティーヴィー!」

 ティービー――繰り返しながら、私は心のメモ帳に、×印をつけた。
 どうやら私は男運が悪い。
 この記念すべき10回目のお見合いも、最初はうまく行っていたと思ったのに、どうしてこうなってしまったんだろう。

「だから、ティーヴィーですよ!」

 最後には怒り始めた彼に、「英語の発音に厳しくないこと」――私は結婚相手に求める条件をもう一つ付け加えよう、とひそかに決意したのだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム