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30年もの

「何よ、あんたが飲んでるウイスキーだって、30年ものじゃない」

 酔っ払った女上司は、入社したての若い男に文字通り絡みついた。そして、

「あたしだって30年もので飲み頃なのよ!」

「ははは……」

 新入社員は苦笑いして、

「いや、『生まれてから30年』だったらまだイケますけど、部長、『入社してから30年』じゃないですか。それはさすがにちょっと……」

 そのあと「入社してから30年の何が悪いのよぉぉ!」――泣き叫ぶ部長をタクシーに乗せるまで、どれほどの時間がかかったか、そして新入社員が「少しは空気を読め」とどれほど説教されたかは、まったく想像に難くないところである。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム