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幸せな寝相

「やー、うちは子供が生まれてから、川の字で眠るようになりましてね」

 

 部下の男が、会社の上司にそう言った。

 

「しかし、川の字とはよく言ったもんですよね。両側の長い線が両親で、真ん中が短いのが子供を表しているわけじゃないですか。それに気づいたら感無量でして……」

 

「そうか。うちも子供が小さい頃はそうだったなあ」

 

 上司が微笑んだ。そして、

 

「言うまでもなく、川の字から三の字、それからコの字にエの字、上の字に、難しいところでは山の字なんかもやったなあ……」

 

「さすがは部長。山の字ですか……」

 

 感心する部下に、部長は、

 

「いやあ、身体を直角に保つのが難しくてね、一晩しか保たなかったが」

 

 ハッハッハ、そう笑って、二人はその後も寝相談義に花を咲かせたのだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム