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男と女の見分け方

「ああ、もうそりゃあ一発よ。一発でわかる」

 

 顔にモザイクのかかったハンチング帽の男は、これまた音声処理された声でそう言ってうなずいた。

 そして、何か言いかけるインタビュアーを遮って、

 

「お前さん、あれだろ? 最近はゲイだか何だか知らねえが、綺麗な野郎・・もたくさんいるって言いたいんだろ? そうそう、女装とか。男か女か、一見見分けがつかない、ってな。

 けど、俺が言ってるのはそれも含めてってことだよ。ホルモン注射なんかしてても、サッ――この動きよ。サッ、この触れるか触れないか、それだけの動きで、俺は男女の区別がつけられんだ。

 当たり前よ、舐めないでくれよ。こちとら地下鉄のヤッさんだぜ? 女性専門、女に化けた男なんか触った日にゃ、俺の×××ピーッを切り落としてやるよ」

 

 ハッハッハ、下品に笑う痴漢に日本中の女性が眉をひそめた。

 そして、日本中のゲイが我先にと、ヤッさんが犯行に及ぶという地下鉄に乗り込んだ。

 

 彼に痴漢されたら一人前――ゲイの間に、そんな都市伝説が生まれた、これがその瞬間であった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム