神様☆見習い中 その2

 棺桶の中で、男は安らかな顔をして眠っているように見えた。

 駅前で暴走したトラックに轢かれ、即死した男。

 

『もう一度彼女に会いたいって、そう言ってましたよ』

 

 通りすがりの人がインタビューに答えていたと、女はそのあと聞いていた。

 そして、彼女は泣いたのだ。

 そう、この女が彼が最後に会いたいとつぶやいた元彼女だったのだから。

 

「何で死んじゃったのよ……」

 

 その安らかな顔に向かって、彼女はつぶやいた。涙がぽとり、と彼の頬に落ちた。それはまるで、死んでしまった彼が涙を流したかのようだった。

 

「どうしてよ! どうしてなのよ!」

 

 泣きながら、彼女は叫んだ。

 

「どうして、死んじゃったのよ! 生きていればまた会えたのに!」

 

 ほら泣かないで、友人の手が彼女の肩をつかむ。その手を振り切るように、彼女は叫んだ。

 

「私だって会いたいよ! もう一回会いたいよ! ねえ、神様お願い、彼をもう一度生き返らせてよ!」

 

 と、目を閉じたそのときだった。

 きゃあああ、悲鳴が響き渡り、彼女が目を開けると、そこには棺から起き上がった彼の姿が――!

 

「ぎゃあああああああああああ!」

 

 彼女は思いきり叫び、あたりは阿鼻叫喚に包まれる。またしても救急車が呼ばれ、生き返った当の本人は何が起こったのか分からないといった顔で、ストレッチャーに乗せられ、病院へ運ばれていった――。

 

         *

 

 その頃、天上では――

 

「生き返らせて下さいって言われたから、生き返らせたんだ。それのどこが悪いんだよ」

 

 神様見習い中の子供が、お目付役の老人に叱られ、拗ねていた。

 

「まったく人間は勝手だ。死にたがったり生き返りたがったり。それでいて、こっちが願いを叶えてやったら不満を言うんだから」

 

「そうですよ、だから簡単に願い事を叶えちゃいけないんです!」

 

 老人は言い、

 

「ほら、驚かせてしまった人間に、ごめんなさいは?」

 

「……ごめんなさい」

 

「もっと大きい声で!」

 

「ごめんなさい!」

 

 天上に二人の声が響き渡る。

 神様見習いが、神様になるのは、まだ遠い先のことのようであった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム