おひとりさま

 日曜夜の回転寿司。

 

 ファミリーの多いこの時間帯、テーブル席は一時間待ちの大行列。

 といって、カウンター席なら空いているというわけでもなく、二人組と二人組の間の一つ席がぽつんと空いているだけ、といった状況である。

 

 待合スペースは子供たちの騒がしい声が響き、泣き出す赤ん坊、それに顔をしかめる老夫婦など、殺伐とした雰囲気が漂っている。

 立ち働く店員たちは、その雰囲気に怯え、待合スペースを早足で通り過ぎる始末。

 言わずもがな、客案内係の店員は「待ち時間って、あとどれくらい?」、半分怒鳴られるように聞かれ、泣き出しそうだ。

 

 そこへ、救世主はやって来る。

 

 颯爽とドアを開け、待合スペースの雰囲気をものともせず、涙目の店員に近づくと、さわやかな笑顔で人差し指を一本立てる。そして、

 

「一人なんですけど」

 

「お、おひとりさまですね!」

 

 店員がぱっと目を輝かせる。

 

「おひとりさま、ご案内!」

 

「へい、おひとりさま、いらっしゃい!」

 

 彼は二人組と二人組の間、その狭い一席に腰を下ろす。そして、店員に笑顔で赤だしを頼む。

 

「はい、赤だし、すぐにお持ちします!」

 

 店員が厨房に去って行く。その足取りはどこか軽い。

 彼はセルフでお茶を入れると、流れる寿司を吟味し始めた。

 

 そう、こうして日曜の夜に現れる「おひとりさま」。

 彼らは、殺伐とした時間に微笑みをもたらす、真の「おひとり」なのであった――。

 

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