二日目のカレー

「二日目のカレーは美味しいんだ」

 

 そう断言した男に、友人は、

 

「いやいや、それは迷信だ。いくら食べる前に火を入れても、翌日のカレーは食中毒の原因菌が増えて危険なんだぞ。だから、一階で食べきれる量をつくるべきなんだ」

 

 すると、男は首を振り、

 

「最近は手で握ったおにぎりは危険だとか、まな板やテーブルの菌が気になるとかいって、除菌しまくるだろ? 二日目のカレーしかり、そっちのほうが危険だよ」

 

「どういう意味だよ」

 

「考えてもみろよ。俺たちは子供のころ、手で握ったおにぎり食べて食中毒になったか? テーブルの菌で死んだやつがいたか? そりゃ、生肉とかお弁当とか、気をつけなきゃいけないもんもあるだろうけど、神経質になりすぎると、逆に耐性がつかなくなって危険だぞ。だから、俺は二日目のカレーが美味いと言っているんだ。一種の啓蒙活動だよ」

 

「啓蒙活動ね……」

 

「そうだ。二日目のカレーは美味い運動だ」

 

 男はうなずくと、掲示板に手作りのチラシを貼りつけた。

 

 そこには、体験談として「真のカレーは七日目から」という世にも恐ろしいコラムも、同時に載せられていた。

 

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