三つ目の選択肢

「うん、わかるよ。オレも昔はそう思ってた。だから、いまのお前と同じようなこともやったさ」

 

 若い男が、少年に向かって力説していた。

 

「でも、ダメなんだよ。こんなことしちゃ。ほら、どんなに綺麗な花でも、摘んだらしおれるだろ? 生きてたときの輝きは取り戻せない。オレにはそれがわかった。だから、こういうことはやめたんだ」

 

「でも、そのままにしてても花は枯れるじゃないか」

 

 少年は不服そうに言った。

 

「だったら、その美しさを留めてやるってのも、いいことだろ」

 

「いやいや」

 

 男は首を振った。

 

「それができないから、そう言ってるんだよ。見ただろ、オレのコレクションを。瞬間冷凍したり、防腐処理をしたり、ビンに詰めたり……細心の注意を払ってあれなんだ。だから、このまま取っておくのが一番なんだよ」

 

「このまま取っておくなんてつまらないよ!」

 

 少年は叫んだ。

 

「俺はどうしてもあれが欲しいんだ」

 

 男が言った。

 

「ダメだって。いまは綺麗でも、くり抜いた瞬間、死んでしまうんだ。そんなことはオレが絶対に許さない」

 

「嫌だよ、やらせてよ!」

 

「ダメだ、このまま取っておくんだ」

 

「嫌だってば!」

 

 とうとう少年がくり抜くため・・・・・・に用意してあった小さなスプーンを男の目玉に突き立てた。

 ぎゃああ、男は叫び、それでも少年を鎖で滅多打ちにする。鎖はに彼が用意したものだ。

 うああ、頭から血を流した少年が吠える。さらにスプーンを突き立てる。男がこの世のものとも思えない絶叫を上げる。

 

 私は、というと、彼らがお互いを殺し合って両方とも死んで欲しい、と切に願ってやまなかった。

 

 なぜなら、くり抜かれる・・・・・・取っておかれる・・・・・・・か、どちらにせよ、私を待つものは恐怖でしかないことを、棚に並んだ男のコレクション――人間の目玉たちが教えてくれていたからだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム