ベストフレンド

 「フレンド」とは、英語で「友人」を示す単語である。

 そこに「ベスト」をつけると、「ベスト・フレンド」。「親友」と訳される言葉となる。

 

 ところで、「ベスト」というのは最上級を意味する言葉であり、その一段下は「ベター」である。

 ということは、「ベスト・フレンド」ではない「フレンド」は、「ベター・フレンド」ということになる。

 「君は僕のベター・フレンドだよ」、そう言われてもいまいちピンと来ないが、要するに「ただの友達」ではないということだろう。

 よって、もし誰かにそう言われたら、あなたは手放しで喜ぶべきである。

 

 また、「ベスト」の反対は「ワースト」であり、「ベスト・フレンド」が存在するのならば、「ワースト・フレンド」の存在も認めねばらなないだろう。

 「君は僕のワースト・フレンドだ」、そう言われたら、あなたは怒ってもいい。

 もしくは、なぜ自分がワーストに落ちてしまったのか、聞いてみるのも一手だろう。

 

 しかし、「君は僕のワース・フレンドだ」と言われた場合は、その怒りをどうか堪えていただきたい。

 何せ、「ワースト」ではなく、「ワース」なのだ。あなたの存在は、最下位ではないということである。

 頑張れば「ただの友達」になることも夢ではないのだ。

 

 しかし、目指すからには夢は大きく、「ただの友達」ではなく、ぜひとも「ベスト・フレンド」の座を目指していただきたい。

 人類は皆、それぞれの「ベスト・フレンド」になるために生まれてきたのだ――そう考えれば、宗教や戦争など、どうでもよくなることだろう。

 

 フレンドから世界平和を目指して。

 ――――日本ベスト・フレンド協会は、そんなあなたを応援しております。

 

        *

 

「っていうパンフレットがポストに入ってたんだけど、これ、どうしよう」

 

 相談した私に、大学の友人たちは、

 

「どうしようって……なんか変な宗教の勧誘でしょ? 無視しとけば?」

「こんなの読むだけ時間の無駄だよ」

 

「無駄……うん……まあ、そうだね……」

 

 私はしぶしぶパンフレットを引っ込めた。

 

 しかし、そうしながら、この「知り合い」と「友人」の間くらいの関係である私たちは、一体どの種類の「フレンド」なのか、確認したいという欲求が湧き――さらに同時にそんなことを確認したら、確実に「ワースト・フレンド」に落とされそうな雰囲気に怯えていたのだった。

 

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