サムライ

「サムライに会いに来ました!」

 

 開口一番、叫んだアメリカ人に、周囲はぎょっとし、それからクスクス笑いが漏らした。

 するとアメリカ人は、

 

「ん? 何かおかしいですか? アメリカにサムライいません。なぜ? ワタシ考えました。思いつきました! サムライ、飛行機乗れないからです!」

 

 どういう意味? サムライって恐がりだっけ? 周囲の人々が再びざわめく。

 

「飛行機に乗れないって……?」

 

 ちょうど友人を待っていた私は首をかしげて――ああ、と納得してうなずいた。

 

 飛行機に刃物カタナは持ち込めない。

 しかし、サムライがその魂であるカタナを手放すはずはない、あのアメリカ人はそう思ったのだろう。

 

       *

 

「アメリカって変な人がいるんだね」

 

 空港での出来事を友人に話すと、海外赴任で一年アメリカにいた彼女は、笑ってうなずき、

 

「カタナは持ち込み禁止、みたいな論理なことを言いながら、日本にサムライがいるって夢が捨てきれないのがアメリカ人だよ」

 

 と、彼らの国民性を簡潔に解説してくれた。

 

 そしてその夜、私たちは彼女の同僚に写真を送るため、ニンジャ居酒屋へと足を向けたのだった。

 

【1分で読める超短編小説集】(山野ねこ) - カクヨム